昔から“縁は異なもの味なもの”なんてことを申しまして、実にご縁というのは不思議なものでございますな。五円たって、真ん中に穴が開いてるのは不思議だなあ、なんてとぼけた話じゃございません。
45年もの昔、高等学校を卒業した横町の山さん、別に隠れて暮らしていたわけではございませんが、卒業した地をすぐに離れてしまった関係で、どなたとも連絡を取ることなく、年だけ取ってしまったという何ともお粗末な野郎でございます。
さて、そんな山さんの元へ、1通の便りが届いたのは、2011年3月、桜が咲くチョイ前の事でしたな。「おい、熊さん、今年の花見はどうすんだい? やっぱり上野かい?」町内の集まりで、気心の知れたお仲間と茶碗酒を酌み交わしながら、与太話にふけっていた頃でした。
「昔の倶楽部の仲間で集まりたい」と、何とも心温まるお誘いの文でした。山さん、喜びましたな。盆と正月と、月光仮面と隠密剣士と少年ジェットが一緒に来たような、えっ、古い? まあ、それほど喜んだってことですよ。
文をくれたのは、山さんの5つほど年下の無骨な男でございました。無骨ではありますが、まめなその男は、なんとみんなのために伝言板を開いたそうで、山さん、またまた喜んで、その伝言板に、ある事ない事書きまくったそうな。えっ、ある事ばっかり?
そりゃ、そうだ。ない事を書いちゃいけません。
ふとある時、山さんのご同期が、その伝言板に気づいたんですな。
「おや、これは同じ21期の山さんじゃないのかい?」
“一瞬にしてひらめいた”、てんだから、このご同期もただ者じゃない。
後はもう一気呵成、伝言板の親爺に連絡する。親爺から、山さんに連絡を取ってもらう。お調子者の山さんは、その日のうちにご同期に連絡を入れる。
トントントンと話は進み、後はもうお輿入れの日取りを決めるだけ・・・
んっ、話がこんがらがってる?
おお、そうだそうだ、婚姻の話じゃねえや、落ち着きなよ。って、あっ、おいらのことですね。
まあ、そんなこんなで、「同期が集まるので、たまには穴倉から出てこい!」という強いお沙汰があったので、行ってきたというわけでさあ。
つづく